カラダをつくる、タンパク質
人のカラダは、水分と脂質を除くとほとんどがタンパク質でできています。筋肉や臓器、皮膚、髪、骨、爪などの主成分もタンパク質です。生命の維持に欠くことができない、重要な構成成分です。
タンパク質は、アミノ酸がたくさん繋がったものです。タンパク質を構成するアミ ノ酸は20 種類あり、アミノ酸が 2 個以上結合したものを「ペプチド」、一般に 10 個程度結合した ペプチドを「オリゴペプチド」、それ以上を「ポリペプチド」といい、タンパク質はアミノ酸が 80 個程度 かそれ以上結合したものです。 食べ物から摂取したタンパク質は、胃で消化されてアミノ酸やペプチドになり、腸で吸収され、体内の必要な個所に運ばれて行き、筋肉や内臓、酵素など、様々なものに利用されます。
アミノ酸の種類とそのはたらき
タンパク質を構成するアミノ酸には、体内で合成することのできない必須アミノ酸と、体内で糖質や脂質から作り出すことのできる非必須アミノ酸があります。
アミノ酸ごとのはたらき一覧
必須アミノ酸 | バリン | アミノ酸の種類であるバリン、ロイシン、イソロイシンの総称を「分岐鎖アミノ酸(BCAA )」という。アミノ酸の中でも筋肉の保持や増量にもっとも重要な役割を果たす。 |
ロイシン | ||
イソロイシン | ||
トリプトファン | 多種の有用なアミンなどをつくる。 | |
フェニルアラニン | ヒスタミンなどをつくる。 | |
トレオニン (スレオニン) |
酵素の活性部位などを形成する。 | |
ヒスチジン | ヒスタミンなどをつくる。 | |
リジン | 小麦粉や精白米に不足しがちなアミノ酸。 | |
メチオニン | 生体内で必要なさまざまな物質をつくる。 | |
非必須アミノ酸 | アルギニン | 血管を広げて血液を通り易くするために、重要な役割を果たす。 カラダの余分なアンモニアを除去するのに有用なアミノ酸。 |
グルタミン酸 | 生体内では多くのアミノ酸がグルタミン酸をもとに合成される。うま味のもと。 | |
アスパラギン酸 | エネルギー源として最も利用され易いアミノ酸のひとつ。栄養剤などの成分として利用される。 | |
アスパラギン | アスパラガスから見つかったアミノ酸。アスパラギン酸とともに、TCA回路(エネルギー生産の場)の近くに位置する。 | |
プロリン | 皮膚などの組織を構成するコラーゲンの原料となる。 | |
アラニン | 肝臓の働きを助けるアミノ酸。カラダに必要な糖を合成する材料としても使われる。 | |
グルタミン | 胃や腸管を守る役割をし、カラダに最も豊富に含まれる。 | |
チロシン | 多種の有用なアミンをつくる。 | |
システイン | 毛髪や体毛に多く含まれる。 | |
グリシン | 神経ネットワークの情報のやりとりにも関わり、運動・感覚などのカラダの調節に役立つ。 | |
セリン | リン脂質やグリセリン酸をつくる。 |
タンパク質の合成には、必要となるアミノ酸がすべて十分にそろっていることが重要です。桶の板のように、板が一枚でも短いとくみ取れる水の量(栄養価)は少なくなってしまいます。
必須アミノ酸が、人間の身体にとって望ましい量に対してどれくらいの割合で含まれているかを示す指標として、アミノ酸スコアという数値があります。この値が高いほど良質なタンパク質とされます。
動物性タンパク質は、植物性タンパク質に比べアミノ酸スコアの高いものが多く、たとえば卵はアミノ酸スコアが100で理想的な食品のひとつです。肉や魚は同時に脂質も多く含んでいるので、バランスよく摂ることが大切です。
大豆タンパク質について
大豆は100g中34gものタンパク質を含み、アミノ酸スコアでなんと最高値の100。必須アミノ酸をバランスよく保持していることがわかります。そのため、大豆は良質なタンパク質の供給源として注目されています。
可食部100g当たりの主要成分割合
大豆には脂質やエネルギーを控えてタンパク質が摂れるだけでなく、優れた機能性があることが報告されています。
大豆タンパク質のコレステロール低下作用
食事で摂取したコレステロールは、胆汁酸と結びつき、小腸で吸収されて肝臓へと運ばれます。吸収されたコレステロールは、胆汁酸の材料になったり、LDL(悪玉)コレステロールとして体内へ運ばれます。一般に血中コレステロールが高い状態というのは、血液中にこのLDL(悪玉)コレステロールが増えた状態をいいます。脂質の多い食事など偏った食事をすると、摂取するコレステロールが多くなるため、血中コレステロールが高い状態を引き起こします。
大豆に含まれるタンパク質は、血中コレステロールを低下させる作用があることが明らかになっています。Andersonらによる、ヒトの大豆たんぱく質摂取と血中コレステロールの低減に関する試験報告によると、大豆タンパク質を平均47g/日摂取したところ、摂取前に比べて悪玉(LDL)コレステロールは12.9%減、善玉(HDL)コレステロールは2.4%上昇、総コレステロールは9.3%減少していました。
これは、大豆タンパク質を摂取すると、胆汁酸がコレステロールではなく大豆タンパク質と結びつくことで起こります。本来ならコレステロールに結びつくはずの胆汁酸が少なくなり、肝臓に運ばれるコレステロールの量が低下します。大豆タンパク質と結びついた胆汁酸や、吸収されなかったコレステロールはそのまま体外に排泄されます。そのため、血中に流れるLDL(悪玉)コレステロール量が低減することになります。
1日25gの大豆タンパク質で心臓病リスク低下
肥満・心臓病大国といわれるアメリカでは、大豆タンパク質のコレ ステロールの低減効果に注目し研究を重ねた結果、米国食品医薬品局(FDA)が1999年に「1日25gの大豆タンパク質を摂取することによって、心臓病のリスクを低減する可能性がある」としたヘルスクレーム(健康強調表示)を承認しました。これにより、企業が積極的に反応して様々な大豆食品が生まれ、一般の人々にも大豆が注目されるようになりました。大豆タンパク質の機能性は、世界でも注目され、人々の健康維持に役立てられています。
- 特定保健指導の実践定期指導実施者育成プログラム
- 良質なたんぱく質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- 大豆たんぱ く質の機能性 を探 る:真 鍋 久
- アメリカ合衆国 栄養機能及び健康強調表示:農林水産省
- 大豆タンパク質由来ペプチドの多面的生理機能の解 明に関する研究:中森俊宏
- 発酵食 品 と しての大豆 の健康機 能性:河 村 幸 雄
- 大豆 蛋 白の コ レステ ロー ル調 節 作 用 と加 工 食 品:福井健介