食物繊維を摂るなら「納豆」が最強!その理由と食物繊維のはたらきを解説

食物繊維を摂るなら納豆が最強!その理由と食物繊維のはたらきを解説

「食物繊維」という言葉が、聞き慣れたと思う様になって随分月日が経過しました。今回は、納豆にも含まれる食物繊維についてのおはなしです。

目次

食物繊維は、生活習慣病予防に必須の成分

〝第6の栄養素〟とも言われる食物繊維。栄養成分としては、5大栄養素である炭水化物に含まれます。食物繊維には様々な機能があることがわかってきており、健康増進には欠かせない成分となっています。しかし、現代の日本人は食物繊維の摂取が不足気味であることが指摘されています。

食物繊維が不足するとどうなるの?

食物繊維が不足すると、腸内環境が悪化し、便秘や異常発酵による腹部膨張(ガス溜り、悪臭化)になります。それが長期化すると、腸内の炎症や潰瘍、大腸がんリスクの増大、糖尿病などの生活習慣病のリスク増大、免疫力の低下、うつなどの精神疾患の誘発などが危惧される状態になります。

生活習慣病予防のためには、成人では一日 24 g 以上、 1,000 kcal あたり 14 g 以上が理想とされています。それに対し、実際の摂取量は、成人男性で 18.8 g 、成人女性で 18.0 g と不足傾向なのです(令和元年国民健康・栄養調査より)。
積極的に食物繊維の摂取を心掛ける必要があります。

食物繊維を摂るなら、納豆がおすすめ!

実はゴボウよりも多い!納豆に含まれる食物繊維

食物繊維が豊富な食品にはどんなものがあるかを問われたとき、一般的には、ゴボウ、キノコ類(エリンギ、エノキなど)、コンニャク類が出てくると思います。しかし実は、これらの食品より納豆の方が食物繊維は多いのです。

納豆の食物繊維総量は、1パック(50 g)あたりでは約 3.4 g 。毎日納豆1~2パックを摂ることで、食事摂取基準の不足分を補うことができます。しかも調理せずにそのまま食べられるので、食物繊維を手軽に摂ることができます。

食品可食部50gあたりの食物繊維総量
糸引き納豆3.35g
挽きわり納豆2.95g
ごぼう(生)2.85g
エリンギ(生)1.70g
エノキ(生)1.95g
日本食品標準成分表2020年版(八訂)より作成

納豆は、水溶性食物繊維も不溶性食物繊維も両方摂れる!

食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられます。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、はたらきが異なるため、どちらもバランスよく摂ることが大切です。

納豆に含まれる食物繊維は、水溶性食物繊維は 2.3 g 、不溶性食物繊維は 4.4 g (可食部 100 g 中)となっています。つまり、納豆は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が摂取できることがわかります。食物繊維の点からみても、納豆が優れた食品であることがわかります。

水溶性食物繊維の種類とはたらき

水溶性食物繊維の種類

水溶性食物繊維は、水に溶けやすい食物繊維です。代表的なものは次の通りです。

代表的な水溶性食物繊維

野菜・果物由来の水溶性食物繊維

野菜・果物由来

海藻・キノコ由来の水溶性食物繊維

海藻・キノコ由来

デンプン由来の水溶性食物繊維

デンプン由来

● 野菜・果実由来 : ペクチン、マンナン、イヌリンなど

ペクチン:果実などに多く含まれ、果実をジャムにした時に粘性を与える主成分となります。
マンナン:コンニャクに多く含まれます。
イヌリン:チコリ、ゴボウ、菊芋、ニンニクなどに多く含まれています。

● 海藻・キノコ(菌類)由来 : アルギン酸、アガロース、アガロペクチン、カラギーナン、βグルカンなど

アルギン酸・カラギーナン:海藻のネバネバ成分です。
アガロース:寒天の主要な成分です。
βグルカン:キノコや酵母、小麦などの穀類に含まれており、免疫力の向上効果などが期待されています。(キノコや酵母は真菌類、海藻は藻類であり、共に動物でも植物でもなく原生生物または微生物に分類されます)

● デンプン由来 : 難消化性デキストリン(ポリデキストロース)、オリゴ糖、糖アルコールなど

難消化性デキストリン:グルコース(ブドウ糖)がたくさん繋がった物ですが、1本の鎖状ではなく、たくさん枝分かれした形になっています。枝分かれしたところは分解されにくく、これが難消化性デキストリン、英語ではポリデキストロースと呼ばれています。
オリゴ糖:フルクトース(果糖)やガラクトース(乳糖)にグルコースが数個くっついた物などがオリゴ糖と呼ばれます。
糖アルコール:グリセリンやキシリトール。甘味はあるが、吸収されにくく低カロリーなのが特徴です。

水溶性食物繊維のはたらき

血糖値上昇を抑える
血糖値

水溶性食物繊維は、そのネバネバ効果・ゼリー効果で小腸内での栄養分の吸収を緩やかにし、食後血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。また、胆汁酸と結合し排泄することにより、肝臓内でのコレステロールの取り込みを高め、血中コレステロールを低下させます。

高血圧などの生活習慣病予防
高血圧などの生活習慣病予防

食物繊維はミネラル分を抱き込み、排出する作用があります。余分なナトリウムを排出し、高血圧や塩分過多を防ぎ、多くの生活習慣病の予防に繋がります。(味噌汁の具材には食物繊維が豊富な野菜や海藻が使われ、余分な塩分を排出してくれるので、過剰に減塩を意識する必要はないのです。漬物も同様です。)

悪玉菌を抑え、善玉菌を増やす
悪玉菌を抑え、善玉菌を増やす

ペクチンやオリゴ糖は大腸に届き、ビフィズス菌をはじめとする腸内細菌のエサとなります。一部の腸内細菌は水溶性食物繊維を食べ、短鎖脂肪酸である酢酸、プロピオン酸、酪酸などを作ります。短鎖脂肪酸は、悪玉菌や病原菌の増殖を抑え、腸内環境を整えます。

また、酢酸は抹消細胞のエネルギーに、酪酸は結腸上皮細胞のエネルギー源となり、プロピオン酸は肝臓での脂質や糖代謝に利用されます。さらに、短鎖脂肪酸には腸管運動の刺激、結腸でのカルシウムや鉄などのミネラル吸収促進、消化管ホルモンの分泌促進、好中球やT細胞を介しての全身の炎症抑制効果などの働きが確認されています。

不溶性食物繊維の種類とはたらき

不溶性食物繊維の種類

不溶性食物繊維は、水には溶けない食物繊維です。代表的なものは次の通りです。

代表的な不溶性食物繊維

食物や樹木

食物(野菜など)や樹木の主成分

エビ・カニなどの甲殻類

エビ・カニなどの甲殻の主成分

植物(野菜など)や樹木の主成分:セルロース、ヘミセルロース、リグニンなど
エビ・カニなどの甲殻の主成分:キチン、キトサンなど

野菜ジュースや青汁で沈殿しているのが不溶性食物繊維(セルロースやヘミセルロースなど)です。また、ヘミセルロースの一つであるアラビノキシランは健康食品などでも使用されている成分です。

不溶性食物繊維のはたらき

排便のサポート
排便のサポート

不溶性食物繊維は、水分を吸収し膨潤することで便の量を増やし、腸の通過時間を短縮させます。また、腸を刺激して蠕動運動を活発にします。これらの作用で宿便改善や健常な排便を行うことができます。健常な排便は腸内の不要物や有害物質を体外へ排出させ、腸内をきれいに保つとともに、大腸癌や腸内の炎症を防ぎます。腸内がきれいな状態が続くと、肌のハリやツヤにも影響し美容効果にも繋がります。また水溶性食物繊維と同じく腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整える一役も担っています。

口腔ケア

不溶性食物繊維を含む食品は食感が固い為、咀嚼回数が増える傾向になります。咀嚼回数が増えると満足感や満腹感が高くなり肥満防止が期待されるほか、唾液などの分泌を促し、口腔ケアにも繋がることが期待できます。

高血圧などの生活習慣病予防
高血圧などの生活習慣病予防

不溶性食物繊維も水溶性食物繊維と同じく、余分なミネラル分を吸着し排出してくれるため、高血圧や塩分過多を防ぎ、多くの生活習慣病の予防に繋がります。

食物繊維の摂り過ぎには注意が必要

通常の食事をしていれば、摂り過ぎを心配する必要はありませんが、普通の食事に加えて、食物繊維を主成分とする健康補助食品を多めに摂取したり、オリゴ糖や糖アルコールを含んだ食品やお菓子を摂り過ぎると、お腹が緩くなり軟便や下痢を引き起こすことがあるので注意が必要です。また、過剰に摂取した場合は、ミネラルだけでなくその他の栄養分の吸収を阻害する危険性もあります。摂りすぎには注意してください。

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