女性は納豆を食べるべき?納豆が認知症のリスクを低下させる!?|国立がん研究センターの論文紹介

女性は納豆を食べるべき?納豆が認知症のリスクを低下させる!?|国立がん研究センターの論文紹介
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大豆製品摂取と認知症リスクとの関連について、国立がん研究センターの論文

様々な健康効果で知られる、納豆をはじめとした大豆製品。その中でも、大豆製品と認知症リスクとの関連について研究した、国立がん研究センターがん対策研究所による論文をご紹介します。

参照

原  題 : Soy product intake and risk of incident dementia: the JPHC Disabling Dementia Study
(和訳) 大豆製品の摂取と認知症を無効にする事故のリスク:JPHC認知症を無効にする研究

著  者 : Utako Murai, Norie Sawada, et al

掲 載 誌 : EuropeanJournal of Nutrition. 2022 Jul05; Doi: 10.1007/s00394-022-029937-5.

女性では納豆の摂取によって認知症リスクの低下が認められた

国立がん研究センターがん対策研究所の村井氏らは、日本人における大豆製品、個々の大豆加工食品(納豆、みそ、豆腐)、イソフラボンの摂取量と、その後の認知症リスクの関係を調査しました。その結果、女性では、納豆の摂取と認知症リスクの低下との関連が認められ、特に60歳未満の女性では顕著であったと報告しました。

男性18,991名、女性22,456名を対象に、人口ベースのプロスペクティブ研究*1を実施しました。大豆製品およびイソフラボンの摂取量を算出するため、1995年と1998年の調査で収集した検証済み食物摂取頻度質問票のデータを参照しました。この時の対象者の年齢は45~74歳(調査当時)でした。大豆製品、個々の大豆加工食品、イソフラボンの一日当たりの摂取量を算出し、対照を5群に分けて分析を行いました。

その結果、大豆製品の総摂取量と認知症のリスク低下との関連は見られませんでした。しかしながら、個々の大豆加工食品で分析すると、女性では、納豆の摂取量が多いと認知症リスクが低下する傾向が認められ、60歳未満の群では特に顕著であったと報告しています。60歳以上の女性でも一定の認知症リスク低下が認められました。なお、男性では大豆製品やイソフラボンの摂取量と認知症リスク低下との関連は認められなかったと報告されています。

*1 プロスペクティブ研究:臨床研究の内、医薬品や食生活の摂取などに介入する疫学調査の一つで、「前向き研究」とも呼ばれます。前向き研究とは、試験を開始した時点から未来に向かって情報を集め、解析を行う研究です。一方で、「後ろ向き研究(レトロスペクティブ研究)」は、調査を開始した時点から過去にさかのぼって情報を集め、解析する研究をいいます。

認知症リスクの低減にはナットウキナーゼやポリアミンが関連か?

著者らは考察の中で、イソフラボンの機能性には興味深いものがあるものの、本調査では直接の関連性は確認できなかったとしています。認知症リスク低減に関与する、その他の納豆中の機能性成分として、ナットウキナーゼポリアミンを挙げています。

ナットウキナーゼについては、試験管内試験(in vitro)で、アルツハイマーとの関係が示唆されているβ‐アミロイドの減少効果が確認された論文報告、および、アルツハイマーモデルのラットへの経口投与試験で、BDNF(脳由来神経栄養因子)とIGF-1(インスリン様成長因子-1)の増加効果と脳内でのアポトーシスと炎症因子の減少効果が確認され、高用量摂取群では、アミロイド・プラークの減少が確認された論文報告を紹介しています。ポリアミンについては、ショウジョウバエによる加齢に伴う記憶障害の予防効果に関する論文を紹介しています。

納豆の「咀嚼回数」も関連している可能性を示唆

また、その他の理由として、咀嚼と脳の血流の関係についての論文報告も挙げています。つまり、味噌や豆腐などはやわらかく、咀嚼をあまり必要としないが、納豆は蒸煮した大豆がそのままの形で残っており、充分な咀嚼が必要である。咀嚼回数が増えることにより脳内の血流の増加に伴う脳機能の維持が関与している可能性を示唆しています。

女性では、若いうちから納豆食を習慣付けておくと、認知症のリスクが低下するようです。また、過去の別の論文等で、婦人科系疾患の軽減効果があることも報告されています。なお、過去のJPHC研究*2では、納豆の摂取が、高血圧(2017年)と心血管疾患(2021年)と負の相関関係(反対の関係)があることも確認され論文化されています。

*2 JPHC 研究:Japan Public Health Center-Based Prospective Study の略称。国立がん研究センター社会と健康研究センター長を主任研究員とする、「多目的コホート研究に基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」班が、全国11の保健所と国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大学、研究機関、医療機関などとの共同研究として行われている前向き疫学調査。

ホームページ:https://epi.ncc.go.jp/jphc/index.html
パンフレット:https://epi.ncc.go.jp/files/01_jphc/E5A49AE79BAEE79A84E382B3E3839BE383BCE38388E7A094E7_2.pdf

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