和食は健康長寿につながる!?納豆と魚の相乗効果とは

和食は健康長寿に繋がる!?納豆と魚の相乗効果とは

先日、日本農芸化学会主催のオンライン・シンポジウム「健康長寿に向けての腸内細菌科学の新展開」(2021/9/18(土)開催)に参加しました。京都大学の小川順博士と医薬基盤・健康・栄養研究所の國澤純博士の講演内容の中に、大変興味深いお話がありましたのでご紹介したいと思います。

目次

体にいい油って何?脂肪酸の2つのタイプに注意!

体にとって必要な栄養素、脂質は、さまざまな成分が結びついてできています。その中の一つに「脂肪酸」が挙げられます。脂肪酸は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の二つに分けられます。

飽和脂肪酸:体内で合成できる

パルチミン酸など。牛や豚の脂肪や、バター、卵などの動物性脂質に多く含まれます。体内で合成できるため、摂りすぎると中性脂肪やコレステロール濃度が上がる原因となります。脂質異常症や動脈硬化を引き起こすことがあります。

不飽和脂肪酸:食べ物から摂取する必要がある

魚類や植物油に多く含まれ、コレステロール値を下げる作用があります。一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、さらに多価不飽和脂肪酸にはオメガ6脂肪酸、オメガ3脂肪酸などの種類があります。
不飽和脂肪酸の中でも、体内で合成できない〝リノール酸〟〝α-リノレン酸〟ほんの少ししか合成できない〝アラキドン酸〟の三つを「必須脂肪酸」と言います。つまり、これらは食べ物から摂取しないといけない脂肪酸ということです。

参考:牧野直子監修「世界一やさしい!栄養素図鑑」, 新星出版社 

納豆に含まれるリノール酸と、魚に含まれるオメガ3脂肪酸のはたらき

大豆・納豆に含まれる脂質のうち約半分を占めるのが、必須脂肪酸の一つである〝リノール酸〟です。リノール酸は、体内で代謝され〝アラキドン酸〟になります。アラキドン酸は、免疫機能を調整したり、学習・記憶力を向上させる働きが期待されています。その反面、摂り過ぎるとアレルギーや炎症反応を引き起こし、病気の原因となります。

その炎症反応を抑制する働きをしてくれるのが、オメガ3脂肪酸です。代表的なオメガ3脂肪酸は、α-リノレン酸、EPA、DHAです。α-リノレン酸は、亜麻仁油、えごま油に豊富に含まれる必須脂肪酸です。EPA、DHAは魚(特にマグロや、サバ、イワシなどの青魚)に多く含まれています。

α-リノレン酸は体内で代謝され、EPAを経てDHAになります。EPAやDHAは更に代謝され多くの化合物に変化します。その化合物のいくつかが炎症を抑え、動脈硬化を抑制することが報告されています。

魚と納豆の相性は抜群?EPAと納豆菌との関係が科学的に証明!

EPAやDHAが代謝されて変化する化合物の中で、特に注目されているのが、EPAが代謝されて出来る、〝17, 18-エポキシエイコサテトラエン酸(17, 18-EpETE)〟です。17, 18-EpETEは強い抗炎症活性だけでなく、免疫を制御し食物アレルギーの発症抑制効果があることなどが報告されています。

EPAを17, 18-EpETEに変換する酵素がシトクロームP450(CYP)であることもわかっています。納豆菌は、このシトクロームP450(CYP)を作るのです。つまり、青魚から摂ることができるEPAを、納豆菌が作る酵素が変換することによって、更なる健康効果を生み出してくれるということです。

小川博士は、講演の中で、17, 18-EpETEを活用する機能性食品として、納豆菌、納豆、納豆粉末をあげておられました。納豆とお魚を一緒に食べることは、健康長寿につながるのです。納豆とお魚、つまり、和食は医食同源を体現するものであることが、また一つ科学的に証明されたのです!

【2021/9/18(土)開催】Visionary 農芸化学100 シンポジウム

食・腸内細菌・健康研究領域 第3回シンポジウム「健康長寿社会に向けての腸内細菌科学の新展開」

https://www.jsbba.or.jp/science_edu/jsbba_100years/jsbba_100years_20210918.html
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