免疫とアレルギーの関係とは?アレルギーの種類と原因を解説

目次

危険な侵入物から体を守る機能「免疫」

ヒトは、日々、呼吸や飲食を通して外部から多くの物質を取り込んでいます。その中には、酸素や栄養分・機能性成分などの有用な物も有れば、逆に、微生物(細菌、カビ、酵母、ウイルス)、寄生虫、花粉などの危険物や異物も含まれています。その異物や危険な侵入物から体を守るための機能、それが免疫です。

そして、〝正常な免疫反応〟とは、潜在的に危険な侵入物や有害な異物を見つけ出し、防御力を働かせ、侵入物・異物を攻撃・撃退し、攻撃を制御し終了させる一連の反応のことです。

免疫系の暴走や異常で起きる3つの反応

何らかの理由で免疫系が暴走したり、働かなくなる異常を起こすことがあります。免疫系の異常は、次の三つに分けられます。

  • 自己免疫疾患 : 自己を非自己とみなし、自分自身に対し免疫反応を引き起こした状態。
  • 免疫不全疾患 : 微生物などの侵入物に対し適切な免疫反応を示すことができなくなった状態。
  • アレルギー反応 : 通常は無害な異物に対して体の免疫が過剰に反応し、正常な組織が傷つけられた状態。

なお、自然免疫は、過去の異物への対処は記憶されず、特定の抗原を思い出すことができません。よって、将来の感染に対する持続的な防御は備わっておらず、この点が、「獲得免疫」と異なります。

アレルギー反応の種類とは

アレルギー反応には次の症状があります。

アナフィラキシー

蕁麻疹、腹痛、嘔吐、息苦しさ(呼吸困難)などの症状が複数同時に、あるいは急激に発症するアレルギー症状です。血圧低下や意識障害を起こす、アナフィラキシーショック状態になった場合は、直ちに対応しないと生命に関わる危険な状態になることがあります。食物、ハチ毒、薬物などが原因物質となります。

気管支喘息(成人、小児)

色々な原因物質や環境変化、ストレスなどに対し、過敏に反応する呼吸器系の症状です。息をするときの空気の通り道を気道と言い、その一部であり胸の中にある気管支に慢性の炎症が起こり、粘膜を囲む筋肉が収縮することにより気道が狭くなり、呼吸困難や連続する咳、喘鳴(ゼーゼーヒューヒュー音)などの発作を起こします。運動や冷たい空気による刺激、風邪のウイルス、他のアレルギー反応が原因となります。

アレルギー性鼻炎

くしゃみと鼻水、鼻閉が主な症状です。風邪でもないのに突然、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりを繰り返し起こします。この反応は、本来入ってきた異物をくしゃみで吹き飛ばし、鼻水で洗い流し、鼻閉でさらに異物を入れない様にする生体防御反応ですが、発症中は過剰に反応が起きている状態となります。ダニやペット由来の異物(ハウスダスト)、花粉が主な原因物質となります。

花粉症

花粉が原因となり発症するアレルギー反応で、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみや充血などの症状を起こします。頭痛や発熱を伴うこともあり、近年では、皮膚の乾燥や痒みなどの皮膚炎症状や、アトピー性皮膚炎の悪化に繋がるケースも確認されています。本来は排除する必要がない花粉に対して、身体の防御機能が過剰に反応したアレルギー症状です。場合により、花粉アレルギーと食物アレルギーの同時発症が起こることがあり、注意が必要です。花粉症の症状がある時に、野菜や果物を食べると、数分以内に唇、舌、口内、のどなどに痒みやしびれ、むくみなどが現れることがあります。重篤な場合は、全身にアナフィラキシー反応が出る場合もあります。これは交差反応性と呼ばれ、両方のアレルギー物質が似ているために起こる症状です。

アレルギー性結膜炎

結膜は、眼球の表面からまぶたの裏を覆う粘膜部分を指します。結膜がアレルギー反応によって炎症をおこす病気の総称です。花粉やダニ(ハウスダスト)などが原因物質となります。

アトピー性皮膚炎

かゆい湿疹が皮膚に繰り返し起こる病気で、目のまわり、耳のまわり、首、肘や膝のくぼみなど関節の曲げ伸ばしをしている所によく発症します。アトピー性皮膚炎は、花粉症や食物アレルギーとは異なり、食べ物やその他の原因物質により必ず発症するという訳ではありません。皮膚の弱い体質や、皮膚のバリア機構が充分働かない人に発症する場合が多く、原因などは不明な部分が多いままです。

蕁麻疹

皮膚の一部が赤く膨らみ、数時間から一日程度で消えてしまう症状を繰り返します。多くは強い痒みを伴い、体の色々な部分に同じ様な症状がでます。蕁麻疹と混同されやすい湿疹は、表面がカサカサしたり、何日も同じところに症状が続きますが、蕁麻疹は形や大きさに関わらず、膨らみが消えた後は全く跡が残らないのが特長です。

食物アレルギー

食物によって引き起こされるアレルギー症状です。蕁麻疹、湿疹、嘔吐、下痢、連続する咳、ゼーゼーヒューヒュー音(喘鳴)などの症状を起こします。皮膚、呼吸器、循環器、消化器など複数の臓器に同時に症状が出るアナフィラキシーを起こすこともあり、さらに、血圧低下や意識障害など生命に関わる危険な状態になるアナフィラキシーショックを起こすこともあります。特に、蕎麦やナッツ類は呼吸困難を引き起こし、生命に関わる危険な状態になることが多く、注意が必要です。
アレルギー症状の原因となるのは、食物アレルゲンと呼ばれ、食物中のタンパク質です。ほとんどの食物アレルゲンは分析により特定されています。このアレルゲンを、タンパク質分解酵素などで分解した低アレルゲン食品なども開発されています。食物アレルギーは、症状の出かたや重症度に個人差があります。例えば、卵アレルギーでは、生卵はアレルギーが出るが玉子焼きは大丈夫である軽度の人から、フライの衣に繋ぎとして入っている場合もアレルギーが出る重度の人まで多様です。軽度や中程度の方は、加熱調理によりアレルゲンが分解されることにより、一定程度調理されたもの以上は大丈夫となります。個人差は、反応する食物アレルゲンの種類や量、品目数などが原因となってあらわれます。また、耐性を獲得した時期なども影響します。

薬物アレルギー

ある特定の薬物に対して過剰な免疫反応を示した状態です。痒みを伴う湿疹などの皮膚炎症状がある場合は、薬疹または、アレルギー性薬疹とも呼ばれます。皮膚炎症状の他に、肝臓、腎臓、血液などへの臓器障害が出る場合もあります。薬物アレルギーの多くは内服薬や注射薬によって起こりますが、湿布や塗り薬、点眼薬、吸入薬が原因になることもあります。

アレルギーを引き起こす原因は?

アレルギーを引き起こす原因物質の多くは特定されていますが、真の原因は不明な部分が多いままです。

免疫力は加齢とともに低下して行きます。獲得免疫のうち、主要な免疫細胞である T細胞は胸腺から供給されますが、胸腺は 20歳を過ぎると急激に萎縮します。そのため、加齢とともに新しい T細胞の供給が減って行き、免疫記憶にない新しい病原体に抵抗するのが難しくなります。

逆に言うと、20歳までの若い間に多くの病原菌などの危険物や異物に接していれば、免疫記憶のバリエーションが増え、新しい危険物や異物に対する抵抗力が強くなると考えられています。

子どもの頃の感染や環境がアレルギー疾患の発症を低下させるという「衛生仮設」

1989年に、Strachan により提唱された「衛生仮説」というものがあります。衛生仮説とは、「乳幼児期までの感染、非衛生的環境が、その後のアレルギー疾患の発症を低下させる」というものです。つまり、生育期に衛生的な環境で育った人はアレルギー疾患になりやすいと言うことを説明しています。現代の日本は非常に衛生的で、生育期に細菌、ウイルス、寄生虫と接触する機会が少なくなっています。そのため、種々のアレルギーを発症する人が非常に多くなっていると言われています。また、ノルウェーのオスロー大学病院で、Håvard Ove Skjerven 氏らが行った試験によれば、生後3ヶ月からアレルゲン性食物を食事に加えることにより、36ヶ月後の食物アレルギーの発生が抑制されることが、医学ジャーナルである Lancet誌の 2022年6月25日号に掲載されています。同様な研究報告は数多くなされています。

「衛生仮説」は、完全に証明されているわけではありませんが、花粉症など、全般的なアレルギー疾患の発症に関して、多くの衛生仮説を支持する報告がなされています。例えば、自然免疫のマスト細胞は体内に入ってきた寄生虫を攻撃しますが、寄生虫と接触する機会が全くないと上手く働かず、花粉などの病原性のないものを寄生虫と間違えて攻撃してしまいます。これも花粉症の原因の一つと言われています。

清潔にしすぎ?制御性T細胞がきちんと育たずに免疫系が暴走

また、アレルギー疾患や自己免疫疾患といった、免疫系の暴走による異常の原因は、制御性T細胞がきちんと育ってないためであると言われています。つまり、免疫系全体をコントロールするのが難しくなり、暴走すると言われているのです。清潔にしているという事が良いように見えて、実は免疫系がきちんと構成されないという欠点もあることが指摘されています。生育期(子供時代)には、自然の土や水と多くふれあい、感受性と共に免疫機能も育てて行くのも大事なのかもしれません。

参考文献

1) 免疫系の概要 MSD マニュアル :
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/15-%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

2) 免疫とは何か? 健康長寿ネット :
https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/covid-19-taisaku/menekitohananika.html

3) アレルギーの病気とは 一般社団法人 日本アレルギー学会 :
https://www.jsa-pr.jp/html/sickness.html#allergy-syokumotsu

4) 斎藤博久:衛生仮説、呼吸 25, (4), 373-377, 2006

5) Håvard Ove Skjerven, et al :Early food intervention and skin emollients to prevent food allergy in young children (PreventADALL): a factorial, multicentre, cluster-randomised trial, Lancet , 2022 06 25, 399 (10344), 2398-2411

監修いただいた専門家

小笠原 和也 そのもの株式会社学術顧問/九州大学大学院特任准教授

熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 35年間に渡る納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。

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